「お嬢さん。そろそろなんだろう?」
「何って、元の世界に戻るつもりなんだろう?」
「捨てるなら下手に馴れ合うのはよした方がいい。」
「君も捨てられる悲しみはわかるだろう」
−君を突き放すのに必要な最低限の優しさ−
「」
「なぁに?エリオット」
ブラッドのああ言われてからエリオットと一緒に居ることを控えていた
ブラッドの言うことはもっともだったから。
けど、気が付くと傍にはエリオットが居て。
ああ、私は何時も自分勝手だ。
余計に傷つけるのを分かっているのに。
エリオットの傍に居て、
安心している自分がいる。
戻らなきゃいけないことは分かっているのに、
エリオットは私の考えていることが分かっているんだろう
日を増すごとにエリオットは私にべったりだ
野生の勘・・・ってヤツなのかな...
けど、こうやって過ごすことは嫌ではない
嫌ではないんだ・・・
ただ、エリオットと一緒にいると帰ろうと思う気持ちが段々と薄れていく。
わかってはいる。
これは、夢だ。
そして私は元の世界に…
姉の元に戻らなければならない。
「好きだ」
「わかっているわ」
だから、そんなこと言わないでよ。
離れることを躊躇ってしまう。
ここに残っていいんじゃないかと思ってしまう。
「だから……」
「だから?」
「帰るとか言わないでくれ…」
ズキン―…
刺さるような言葉
ああ、本当にわかってるんだな
元の世界に帰ろうと、戻ろうとしていることを
貴方のことを捨てようとしていることを
「私のこと嫌いになって。私のことなんか忘れて。」
エリオットが私に執着しなければ、私は心おきなく帰れるから。
だって貴方は私が居なくなったら死ぬって言ったでしょう?
私は貴方が好きだから、
私が居ない世界でも生きていて欲しいの。
そうやって笑ってって欲しいの。
貴方のために私にできるのはこんなことしかない。
わかってとは言わないわ。
だから、早く忘れてよ。
「なッ…んで……」
「やっぱり今でもあの人のことが好きだから。」
いざという時すんなり嘘は出るもんだ
帰るという考えは変わんない
だから、早く忘れて欲しい
そのために傷付けたっていいと思ってる
それが貴方の幸せのため
「ごめんなさい」
貴方の傍に居られない私を許して
貴方に何もしてあげられなかった私を許して
好きよ。
元の世界に戻っても
ずっと貴方のことが好きだと思う。
貴方は私のトクベツだから・・・・・
「行かない・・・・でくれッ」
「無理よ」
捨て犬のような目で見ているエリオットの頭を撫でる
何度も、
何度も、
「ホントダメね。けど、そんな貴方が好きだったわ」
2007.07.01
private garden under ground様
提出作品「君を突き放すのに必要な最低限の優しさ」