手を伸ばせば届いてしまうこの距離。


そのくせやけに遠く感じてしまう。


やきもきしているんだ。


結局のところ彼は。
















ボリスはの太腿に頭を乗せたまま微動だにしない。

でボリスが居るのにお構いなしに、読書に耽っている。


ボリスは眠っているのか、その顔に猫らしいあの瞳は発見できない。





「ねぇ


「何?」





ボリスがに問いかける。

寝てはいなかったようだ。


素っ気無い返事に少しだけ脹れる。


だが本で顔が見えていない彼女には無意味な行為だろう。





「ねぇってばぁ」


「だから何?」


「本ばっか読んでないで俺を構ってよ」






「やだ」



「やだ?」



「だってもうすぐ終わるんだから」







ゴーランドももちろんボリスも認める、彼女は活字中毒者だ。




だが、それと同じくらい・・・・いや、それ以上にボリスはに対して中毒者であった。







の視線が自分に向いていなければ嫌だ



が自分の名前をその声で呼んでくれなければ嫌だった



のその手で触ってくれなければ嫌なのだ












「あ」



ボリスはの手から彼女の本を取り上げた。

してやったりな顔のボリス。


もちろん、それに不服なのはだ。






「ちょっと、返して」


「やだね。これがあったら構ってくれないじゃん」






ボリスは本を取り替えそうと手を伸ばすの手を逆に取る。


の視界が一転したと思うと、目の前に不敵味な笑みを浮かべたボリスの顔がある。




猫らしくその瞳は縦長に、爛々と輝いていた。







「・・・・何すんの?」


「遊んでくれるんでしょ?」


「誰が言ったよ。誰が」




「え?が?」




「聞くな。私はその本の続きが読みたいの」









「俺はと遊びたいの」










いつの間にかボリスに組み敷かれている。



本は床の上に無残にも開かれたまま放置されている。

恐らくボリスが投げたのだろう。


こんな状況にも関わらず、態度を全く変えない





ボリスはの首筋に舌を這わす。


ざらざらした猫特有の舌触りにの感度が高まっていく。





「っボリス、」





「やめないよ?」

















嫌がる表情が好きだ、と以前ボリスはに告げていた。

きっとそれは嘘ではないはずだ。

嘘をつくほど、この世界の人間はあまり出来ていない。

一部つく人間もいるが、本当に数えて片手で足りるほどだろう。




ボリスは先刻からしつこくの肌を堪能していた。


おかしい、とは高まっていく快感の中にある冷静な部分でそう思う。














狂っている。






彼にはその言葉が一番似合う。















気が狂っても踊り続けて














(あ、でもそれを嬉しいと感じてる私も狂ってるのか)



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企画"private garden under ground"様、投稿作品。