※この主人公はアリス=リデルさんではありません。

 帽子屋に拾われた、たまったまこの世界に生まれたごく稀にアリスの世界の常識を比較的もった

 猫耳少女となります。あまり恋愛知識に関しては詳しくないので双子に遊ばれる毎日を送っています。

 

 

 

その人は【余所者】で

【特別】な人で

 

なんでもない私も他の人も

みんなその人が好きになるから。

 

私がその人を好きになるのは、おかしなことじゃなくて

だから、あの【二人】が好きになるのも不思議じゃなくて

 

それで、そういうのを【恋】っていうんだと教えてくれたのは

 

その【二人】だったりもする。

 

 

『スキースキー!!』

 

好きすきスキと連呼する姿をみたのは、ほんの数分前であって

はじめてみたのは、もっと前のことだ。

 

『だいすきー』

 

連呼する姿をはじめてみたときは、ただびっくりしただけだったけど

時がたつにつれて、その姿をみるのも慣れてきた。

 

『お姉さんすきー』

 

慣れてきたと同時に、最近どうもおかしい気持ちになる。

なんだかよくわかんないけど、できるだけいっしょにはいたくない。

どっちか一方といるのはいいけど、どっちもは嫌な感じ。

どうしてかわからない、なんだかわからなくなっちゃってきてる。

【恋】っておかしなものだと、おもう。

 

―――そんな今日この頃。

 

 

 

 

 

絡のない等の恋愛

 

 

 

 

 

フカフカの毛

床に敷かれた絨毯の上はお気に入りの場所。

天窓からはいる日の光がぽかぽかで

床はあまり寝転がる場所じゃないといわれたけど

ここは特別イイ場所にしてもらった。

 

元々は、こんなフカフカの絨毯もなかったのだけど

屋敷の主の好意(?)で用意してもらえた。

 

 

いつもは、すぐに丸くなってゴロゴロするのがクセだけど。

今日はほんのちょっと違う。

ゴロゴロしながら、見つめてるモノがある。

ちょっとした今日手に入れたアイテム。

 

「・・・」

 

サラサラと流れ落ちていく砂を見つめる。

これといってなんの変哲もない砂時計。

 

ほんの少し前までは、【特別】だった砂時計。

 

でも、今はただの砂時計。

 

『アリス、これちょーだい』

数分前、

見慣れたエプロンドレスの裾をひいて言葉にすると

『いいわよ』

コロン・・と手から手へと、砂時計は自分の下へとやってきた。

 

今は平凡なタダの砂時計。

 

でも、ほんのすこし前までは、【特別】の手元にあった【特別】な砂時計

 

「・・・」

 

もらったときは、まだほんの少しだけ【特別】だったような気がする。

ほんの少し、かすった指先と撫でられた指の感覚が大好き。

 

アリスは【余所者】っていう【特別】な人。

だからスキ。

みんなもスキな人。

 

そんなことを考えていたら

あっという間に、最後の一粒が下の砂山のてっぺんにおっこちて

コロコロと周りの砂がくずれた。

一粒だけなのに、たったソレだけが築いた山のなにかを変える。

それは、アリスにとてもよく似てるとおもった。

 

「いいなぁ・・・」

 

無意識だ、でも今まで何度も繰り返した言葉。

無意識に、再び砂時計を逆さにする。

さっきおちた一粒と他に違いなんてないけど

今おちた一粒目が、さっきの一粒ではないことだけはわかっている。

この砂時計の最後の一粒は、とてもアリスみたいに感じる。

 

 

アリスみたいだから良いのだろうか?

 

 

「なにが〜」

「なになに〜?」

 

 

突然かけられた声に肩がはねる。

 

 

「なにか企みごと?」

、わるい子してるんだ〜」

 

前触れもなく、後ろに立っていたのはまったく同じで違う姿の二人。

トゥイードル=ディー&ダム

ココ、帽子屋ファミリーというマフィア屋敷の門番たち。

私がこの屋敷に拾われてきたときには、もう二人はいた。

双子の彼らの容姿は瓜二つ

その瞳と服の色がなければ見分けなんてつかないし

その色さえも、実のところは不確かな情報でしかない・・・と先日知ったところだ。

 

それを教えてくれたのが、アリス。

 

双子の彼らとアリスも仲がいい。

彼らがよく3人で遊びに行くのをよく見るし

お話してるのもよくみる。

 

そういうときは、きまって私は間に入れなくてちょっと遠くを歩いてくようにしてる。

 

アリスが来てからは少なくなったけど・・・

アリスが来る前は珍しくもなくやってきてた。

門番なのにさぼりにきてた。

珍しく今日は双子がやってきた。

勝手知ったるというように双子の彼らは

のぞきこむように、後ろに立っていて

そしていつの間にか両脇を囲むようにしゃがみこんできた。

 

、わるい子なんだ。」

「わるい子わるい子〜」

 

からかうように何度も言う二人、

今まで何度もあったこと、今更私が咎めることもしないし・・そんな権利もない

でも・・そんなきまったことだろうと、顔は正直で自然と不機嫌に眉をよせる。

 

「私はわるい子じゃないもん。」

 

ぷいっと顔を背けるものの、

両脇を二人に囲まれていれば、どっちを向いたところでどちらかの顔が見える。

 

今回はディーの顔が目の前にいた。

 

かわいいー」

「むー!」

 

どちらでも、同じことをされると知っているのに

結局今日も繰り返してしまう。

いや、最近ずっと二人とも来たりしなかったから

油断もしていたかもしれない。

ぎゅーっと、首に手をまわされて顔を抱きしめられる。

 

いつものこと

からかってくるときは、二人とも上機嫌で

かならず、玩具の人形みたいにされる。

 

どういう意図があるかは知らないけど

正直、うれしくなんてない。

 

乱暴だし、髪の毛をクシャクシャにされるし

うまく動けないし、目の前に見えるのが見慣れた制服だけだし

息苦しいし、それから・・・

 

今は前よりもっとうれしくない。

 

フワリとかおる、二人じゃないニオイ

【特別】なニオイがするから。

 

 

「ぅー!やっ!!」

 

ガブッ!

 

目の前に見えた手に噛み付く。

 

「あ・・」

「兄弟?」

 

無意識

勝手にうごいた。

口の中に広がるニオイ。

自分の中に生まれてくるカタコトのような言葉。

ゆるんだ腕から勢いよく逃げ出した先は部屋の隅。

 

日向に二人、日陰に自分。

同じ部屋なのに、温度差に毛が逆立つ。

 

もちろん、二人の行動も原因のひとつにはあがるけれど

妙に肌がチクチクと痛むように嫌な気分。

 

「(どうして)」

 

今にはじまったことじゃない。

 

「今回は牙をたてられちゃったよ・・ほら、血がでちゃった」

「ほんとだ・・駄目だなぁ兄弟。僕らに隙があるって証拠だよ〜」

 

少しだけ、口に残る鉄臭さは私が一番嫌いなニオイ。

この世界に生きる自分ではずいぶんと不適切な感情かもしれない。

 

「もうちょっとさわってたかったのにな〜」

「しょうがないよ〜相手はだもん兄弟。・・・ボリスほどじゃないけど〜」

 

話題にあげられる友達の顔が浮かぶ前

 

カチャン・・・

 

包まれるように、お気に入りの絨毯の上に横たわっていた二人の斧が返事をするように

吸い込まれるように二人の手に握られ音をたてた。

時刻はちょうど昼を過ぎたところ、太陽は屋敷の真上を漂っている。

天窓から入る光は今が一番強いんじゃないか?

最高の場所に、最悪の二人が立っている。

 

斧の刃が射るように光を放っていて、逆に二人の影が深く見える。

 

「・・・はわるくないっ」

 

頭で考えるより先に言葉が口をついてでる。

いまさらなにが”わるい”のかも不明だが、言っておかなければと思った。

 

「そうかな?僕等別になにもしてなかったよね?」

「そうだね〜兄弟はただ、にさわっていただけだもんね」

 

「いやっていった!」

 

「言葉より行動のほうが早かったんじゃないかな?

僕、手が痛くなってきたよ兄弟」

「それは大変だね〜。僕たちの仕事は門番、両手は大切な商売道具なのに」

「わるい子にはおしおきが必要だよね、兄弟」

「そうだね、おしおきが必要だ兄弟」

 

帽子の影で見えない目

妙に光る斧

口元が少しゆがんで見えたのは、自分が立っている場所が日陰だからだろうか?

 

「っ!」

 

動く

 

感じる雰囲気でわかったところでもう遅い。

後ろにあるのは壁だから。

 

 

ガシャン!!

 

音を立てて、砂時計が砕けた。

 

どちらかの足にでも踏まれたのだろう、

白い毛の絨毯に、アイボリー色の砂が広がったのが見えて

瞬きをする前に、目の前には見慣れた二色の腕。

 

「つーかまえたっ」

 

チンッ・・・

 

金属が重なる音

立ち上がれば頭ヒトツ分背の高い二人

見上げなくてもわかる立ち位置

 

ビクリと肩がはねる。

 

、どうして噛んだの?」

 

別に、怒った声じゃない。

ただの、問(とい)。

まるで原因のわからないことに対しての問。

そこになんの感情もない。

 

「・・・」

 

なのに、なぜか妙に気持ちが悪い。

いまさら牙をたてたことが問題にはならないはずだ。

爪をたてたり、思いっきり動いていて怪我させたりなんて日常茶飯事だった。

 

たしかに、相手は二人だし

かないっこない事はしないほうがいいと知ってるけどいまさらだ。

 

でもどうしてだろう?

今さら、なにかに違う気持ちが生まれてきている。

 

それは、二人がアリスと一緒にいるのを見たときに似てる。

 

私は【特別】じゃないから、アリスみたいに何をしたって嫌われないって保障はない。

嫌なことされたから、牙をたてて

一人が血をだしただけのこと。

 

この世界に”血”ひとつでなにか問題がおきるわけじゃないのに

 

「(あれ?)」

 

矛盾

 

生まれてくる気持ちは、謝罪に近い。

 

?」

 

名前を呼ばれても、返事をしたくなかった。

返事をしなきゃ駄目だ、ともおもった。

 

だって、私は【平凡】なのだから。

【特別】じゃない。

 

そうしなきゃ、あの砂時計みたいになってしまう。

 

せっかくもらった、大切な砂時計。

アリスにもらった大切な砂時計だ。

壊された、好きな人からもらったものを。

 

いつもなら、大切なものを壊したほうが悪いと言える。

 

いまさら、怖くなんてないはずなのに

 

「どうしたの?。」

 

キィ・・と嫌な金属音がした

嫌な音だ、聞くときはあまりいい思い出なんてない。

 

「!」

突然空気がかわる。

 

 

、いる?』

 

アリスの声だ。

今のこの屋敷の客人の声。

 

【特別】な人の声。

心地よくて、大好きになれる声。

不思議で怖くて楽しい人

 

アリスは教えてくれる

いろんなこと

私の知らない【二人】のことも

 

「ァ・・」

返事をかえそうとしたら、二人同時に口をおさえてきた。

びっくりして、二人を見上げると目が合う。

二人とも、まるでかくれんぼをはじめたみたいに

口元に斧を抱えた手の指をたてて

息をひそめている

 

笑い出したいのをこらえているのは、いつでもばれてもいい嘘をつくとき

 

このかくれんぼだって、見つかったっていいということだ。

 

?いないの?』

 

再度ドアをノックする音と、声がかかってきた。

この時間は、いつも部屋で寝転がっていることが多い。

アリスもそれを知って、時々返事を確認せずに部屋にきてくれることが最近ある。

運がよければきっと、この現状からも抜け出すことができるかもしれない・・・

 

「ねぇ、はお姉さんに来てほしい?」

「・・・?」

 

特に抵抗もしないでいると声がかかる。

 

ばれてもいいと思っているであろう二人だけど、

自分から見つかろうとはしていない様子で小さな声をだしている。

 

「来てほしいよね?だってさっき名前を呼ぼうとしていたもん」

「そうだね、はきっとお姉さんにきてほしいんだよ兄弟」

スッ・・・と口から手が離れていく。

 

なにをしたいんだろう?

なにを期待しているんだろう?

 

意図の見えない行動と、今もまだドアの外側に感じる気配。

 

はお姉さんが好き?」

問いかけと、わざとらしく耳にかけられる息。

「っ・・」

「お姉さんスキだよね」

小さな声を意識してだとおもっていた、耳元への会話だったが

それが、ただの囁きではないと感づくには遅かった。

「好きだよね?だってはよくお姉さんに懐いているもん」

わざとらしく、触れる唇。

かかる息は両側から

はお姉さんが好きだよね」

塞ごうとしたところで、すでに口元から離れた手が両手をにぎっていて

 

「・・・(計画犯め)」

 

言葉にしたら、小声ではすまなそうな状況に唇をかむ。

耳元で話されるのは嫌いだ。

・・・というか苦手。だと二人は知ってる

 

今も遊んでいるんだ、二人は私で

 

いっそ、アリスに入ってきてもらって二人を叱り付けてほしいと願うばかりだが・・・

 

でも、そうじゃない気持ちもわいてくる。

 

「(あれ?)」

 

だって、結局二人が望む結果になるだけじゃないのか?

 

「お姉さんがいっちゃうよ?いいの?」

「それとも、ずっとこうしてたい?」

 

 

どうしたいの?どっちも嫌なの?

 

 

「・・・(ふたりはアリスが好きだから)」

 

心の声が嫌に響く。

響いた言葉が、心に重くのしかかってくる。

思い通りになんてひとつもいかなくて

思い通りになんてひとつだって、させたくない。

 

【特別】な人

最後の一粒と同じ

 

全てに影響があって

全てと同じ人

二人が好きな人

私も好きな人

 

でも、【好き】なのに今会いたくて

会いたくないって思ってる。

 

ドアにかけられた一枚鏡がうつすのは

私と二人の3人の姿。

 

手をつないでるみたいな

ほんとは、ただ拘束されてるのだけれど・・

二人の男の子と私。

ちょっと前までは、普通だったのに

 

今は違う

だって、【特別】がいるから。

私たちも、同じじゃいられない。

 

「・・・」

 

「お姉さんのところに行きたい?」

、いきたい?」

 

行きたいのは二人であって、私じゃない。

「(あれ?)」

見つかりたいのは二人であって、私じゃない。

「(どうして?)」

見つけてほしいのも、咎められたいのも

「(アリスが好きなのは私なのに?)」

ぜんぶ二人ばかり。

 

私は違う

 

「(あれ?)」

 

ぜんぶ二人が悪い

 

「(どうして違う?)」

 

モヤモヤもやもや

 

スキ

 

アリスがスキ。

二人もアリスがスキ。

 

なのに、三人がいるのを見るのは嫌。

 

アリスがとられちゃうから。

・・・でも、二人が怒られるならいいんじゃないのか?

 

「(・・・二人はM?じゃなかったから・・・いい??あれれ??)」

 

「「」」

 

耳元で声がする。

とても似てるくせに、わざと声色をかえた重なった声。

ふきかけられる息と、触れる唇・・・

 

「っ・・ひぁにゃっ!?」

 

両耳を噛まれて声がでた。

 

自分で自分の声にびっくりするほどの声。

 

バタンッ

 

目の前のドアは、結局開いてしまった。

好きな人の手で開けられた。

 

!?・・・って・・」

 

そこにいたのは、アリスをはじめとして・・・

ブラッドとエリオットまでいた。

 

私は硬直してて

双子はニマニマ笑ってて

 

「ほぅ・・・・」

「へぇ・・・」

 

ブラッドとエリオットはそれだけいってどこかにいっちゃって

 

 

なんとも気まずい顔をしたアリスに、私はなにも言えずにいて

 

「お姉さんも混ざる?」

「たのしーよ?」

 

誘いはじめるディーとダム

 

「(!!!)」

 

それからの記憶はあまり覚えてない。

確か・・・双子はどっちも殴ろうとしたとおもう。

爪をたてて追いかけた。

 

でも結局なにもできなかったような気がする。

 

そして、大泣きしながら部屋を出た。

 

アリスに頭をなでられながら、新しい砂時計をもらってなぐさめられた。

 

 

部屋の絨毯はフワフワの毛をしていたから

ガラスと砂がよくとれないからって、新しいものをメイドさんが用意してくれるまで

元通りの、ただの床になっちゃうことになった。

 

 

―――

 

 

「お前ら、アリスが好きなのか?それともが好きなのかよ?」

「なに、ひよこウサギにはあげないよ」

「そうそう、僕等のことに首をつっこまないでほしいね」

 

後々アリスに盛大に怒られたディーとダムは、エリオットの見張りつきで門の前に立っていた。

 

「お前ら・・・いい加減遊ぶのも大概にしろよ」

 

呆れ顔で言うエリオットに、目をあわせてなにか言葉ない会話をかわす二人

 

「・・・僕らもお姉さんも好きだよ」

「そうそう、お姉さんも好き」

「・・・”も”?」

もお姉さんが好き」

「そうそう。もお姉さんが好きだね兄弟」

「僕等恋をしてるんだ、みんなで同じ恋をしてるんだよね兄弟。」

「そうそう、僕等は相思相愛だね兄弟。これ以上に全てが合う恋はないだろうね」

 

 

「・・・」

 

 

「僕等は仲が良いからね」

「そうそう、だから僕等は同じものを好きでいるんだよね兄弟」

「ただ、それに混乱してるのはちっちゃいだけなんだよね兄弟」

「そうそう、はまだまだ子供だからね兄弟」

 

「・・・・(汗)」

 

「ひよこウサギになにか言われることじゃないね」

「そうそう、人のことに口出しするやつは馬車に引かれてきっとあの世いきだよ兄弟」

「引いた相手の馬車が汚れるのはもったいないけど、僕等のじゃないからいいね兄弟」

 

 

双子はクスクス笑って話していた。

 

エリオットは呆れたまま

 

ただ

 

「・・・(、あとでお菓子もってってやるからな)」

 

なんともいえない同情をするだけだった。

 

END

☆―☆